ドキュメンタリー: キャピタリズム ~マネーは踊る~

前から気になっていた映画だが、先日ようやく観る事ができた。

期待していた内容だったが、見終わっての感想は「まぁ、こんなもんかな」という感じ。マイケル・ムーアも歳をとったのか、以前ほどのアグレッシブな突撃レポートはあまりない。内容もありがちな巨大企業の悪徳ぶりを淡々と語り続ける形で、あまり引き寄せられなかった。

ふと思い返せば、一昔前ならば観ていて怒りが湧いてくるような内容が数多くあるんだけど、それがない。なぜなんだろうと考えてみると、たとえばバンク・オブ・アメリカやシティーバンクをはじめとする銀行群、保険会社などがアメリカの血税数十億ドルを法律を無視し、使途不明で自由に使いまくっていると聞いた所で、「へぇ〜」くらいにしか思わなくなっている自分がそこにはいた。

もうそんな与太話は日本でも山ほどあるし、今さらそれを騒いだ所でどうにもならないなんて事は分かりきっている。それとこの映画では、そもそもの元凶であるFRBや現在の紙幣制度の根本的な問題については、ほとんど触れていない。きっとそこが「ふ〜ん」となってしまう所でもある。

「資本主義は悪だ」や「それを民主主義で変えていく」というのが映画を通してのメッセージだが、そもそも今のシステムは民主主義で造ってきたのではないのか? 民主主義が進むと衆愚政治になる、こんな事は二千年以上も前の古代ギリシャで既に証明済みだ。それをまた繰り返そうという話? 遠慮させてもらいます。

もちろん「お、これいいな」と思う内容もある。それはウィスコンシン州にある「ISTHMUS(イスムス)」という工作機械の設計と製造を行う会社の例だ。

従業員全員がオーナー(くだらない自社株購入権の事ではない)というその会社は、民主主義方式で全員が投票し、平等に発言できる。そして給料も平等だ。給料を平等にし、全員で意思決定する事により、より利益を上げる事に成功している。またカリフォルニアにあるパン工場でも同じやり方を採用し、工員の年収は65,000ドルを超えるそうだ。つまりCEOの給料も同じ65,000ドル。しかし通常の工場勤務の給料では考えられられない高賃金なのは確かで、士気も高く、売り上げも伸びているのだそうだ。

この方法はとても理に適っていると思う。自分の意志が結果に直接結びつき、労働に対する相応の報酬を得る事ができるのであれば、無責任な投票はしない。仮に誰かが過剰に利益を求めて暴走すれば、他の誰かがそれを止める事ができる。例えそれが通っても、しわ寄せは自分にも返ってくる。

ただしこれが一定の数を超えると、今の政治のように一向に機能しなくなると思う。この例はつまり、目の届く範囲内であれば、民主主義は大変有効な手段となる証明の一つだ。目に見えないところだとどうしても無責任になり、衆愚政治となるのは歴史が証明する通りだが、小規模であればそれは機能する。もちろんそれだけでは完璧ではないにせよ、入り口としては良いのではないだろうか。

国が機能していない今。かつての君主制は独裁政治へ、貴族制は寡頭政治へ、民主制は衆愚政治となり、革命が起きて新たな君主が登場するという無限ループ。「政治」を「経営」に変えても同じ事だ。ワンマン経営、社長派・専務派の派閥争い、公務員や派遣による無責任な開発・生産と、会社も政治もやっている事は一緒だ。

そこから抜け出すためには、やはり新たな価値観、やり方が必要になる。その答えは分からないが、少なくともできなければ同じ歴史が繰り返される事だけは確かだ。